第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

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 ―18― 初出勤 「おはようございます」  出勤初日、俺は元気よく遅刻した。 「遅ぇぞ新人、もう昼が来るじゃねぇか!」  なにこの人、怖い。事務所のソファに大きな態度で座っているその人に初出勤いきなり大声で指摘され萎縮してしまった。所長から十時開店の服屋でスーツを買ってその後眼鏡屋で調整をしてもらってからの出勤と言われていたのだが。 「日比谷が珍しく新入社員入れるって言うからどんな奴かと思って折角見に来てやったのに初出勤で遅ぇ。ったく」  今度は指をさして二度目の遅いという指摘。大きな声だ。その隣にはお連れだろうか俺と歳が近そうな静かに座っている。 「昨日はご苦労だったな。その後は上手くいったか?」 「は、はい。あの、成り行きで彼女の家庭教師をすることになりました」 「なに?」  所長の目つきが鋭くなった。副業禁止の会社だったのかな?特殊な仕事だし、しかも入社初日に副業決めてくるなんて非常識だったか。ゆっくり近づいてきた所長は俺の方に手をやり耳元で呟いた。 「・・・着替え中の写真は撮ってこいよ」 「う、うす」 「うす、じゃねーよ」  梓さんの特殊武器によって俺と所長は壁に吹き飛ばされた。     
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