第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

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 ―19― 駅前 「昨日の犯人は強盗、恐喝の前科持ちだったみたいだ。自首したけどな」  曜子のカバンを狙った犯人はその後自首をしたが今までの前科が悪質だったので俺が戦った“W”も比例して強力だったようだ。 「初日の研修からあんな“W”と遭遇するなんてウタルもツイてなかったな。まぁ結果的に退治できたしお前の経験値も上がってかえって良かったかもな」  所長は笑いながら言うけど、初っ端から死にそうになってこっちは笑ってられないですよ。 「しかしその程度の罪であれほどの“W”が出てくるのは今までに無かったような気がしますね」 「確かにな・・・」  梓さんの見解で一瞬にして重苦しい空気に包まれた。やはりあの“W”は犯人が前科持ちだったと考慮しても強力だったのか。でなければ初めてであんなのが出る恐れがあるならいくら研修でもいきなりはないだろう。 「ま、いっか。なんとかなるさ」  何もわからない新入社員が真剣に考えたのに所長は呑気だった。 「じゃあ、もっと凶悪な犯罪者や例えば殺人犯とかだったら」 「まぁ昨日の“W”より手強いだろうな」     
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