第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

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 俺は唾を飲み込んだ。昨日のがまぐれだったとしてもあれより手強い“W”相手に戦えるのだろうか。かなり不安になってきた。 「まぁこれからだよ。火傘車(ひがさぐるま)程じゃないけど、訓練してウタルも強くなればいいんだよ」 「訓練で強くなる前や強くなった以上に強い“W”が現れあたら?」 「死ぬ」  梓さんはいつもの口調で過激な発言をしてくれる。 「そんな考えでは死ぬという意味だ。お前はいちいち電車に乗る時に事故したら死ぬとか明日地震が来たらとか餅を食べる時に喉につまらせたら死ぬとか死ぬことばかり考えて生きているのか」 「そういうわけではないですけど」 「人間死ぬ時は死ぬ。予測してなくても死ぬのだ。ただ死なないように事前に回避する術を考えるのも人間だ。強い“W”よりもより強くなる信念で取り組めば自ずと結果はついてくるのだ」  梓さんの言う通りだ。始めてもないのにマイナスの事を考えていては前に進まない。ネガティブな思考になったのはニート時代に染みついたのだろうか。そもそもなんでもニート時代のせいにすること自体がネガティブ思考なのかもしれない。俺はニートを卒業して確実に一歩踏み出しているのだから。過去の自分は払拭する。そう強く自分に言い聞かせた。 「梓ちゃん、たまには良いこと言うねぇ」 「たまには余計です」     
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