第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

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 一度だけだが曜子の母親にも会えて挨拶をさせてもらった。母親は大学近くに住んでいる曜子の兄の世話と義理の母の世話で昼夜問わず自宅は留守がちだった。自宅に戻っても家事をしてなかなか休まる時も少ない様子だったが、何かに打ち込んでいなければならない性分だと話してはいたが。  父親にはまだ会ったことないが大学病院で働く医者で家に帰ってこないことも珍しくはないそうだ。おかげで裕福な家庭で育つことができたがそれなりの期待やプレッシャーもあり現在の親子のすれ違いが現状なのかもしれない。しかしこの件は両親の話を聞いてみないとわからないが俺がどこまで踏み込んでよいのやら。家庭教師をしながらタイミングを見計ろう。  入社して二週間が経った。同時に家庭教師をしてからも二週間が経った。曜子は何かの居残りで帰宅が遅くなるということだったが、丁度からしの配達の時間と場所が近かったので駅で待ち合わせをして一緒に曜子の家に帰る約束をした。直帰させてくれる会社はさぼることも簡単にできるだろうから逆に信用を失わないように意識して業務をこなしていかなければならない。その分、家庭教師が無い時は遅くまで事務処理したりなにかと会社に残っているのだが。引っ越しも無事に終え事務所の上の階に住んでいるから通勤時間の浪費を考えると助かっている。つまり直帰と言っても家庭教師が終わったら会社に帰って上の階の部屋に帰るから一般的に不思議な現象なのだが。     
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