第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

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 「私ね、地中美術館にも絶対行きたいの。もちろん直島の中にある現代アートも全部見て周りたいの。私、現代アートに明確な答えはないと思ってるの。作ったアーティストも観覧者にどう思われるかなんて未知数だし、こう思ってほしいとかいうのもないのかもしれない。───嬉しい悲しいとか壮大であるとか。見る季節によっても変わるし一番は観覧者のその時の内面によるのかもしれない。ひょっとしたら何も感じないかもしれない。それが良い悪いとかじゃなく。───そんな現代アートが点在する瀬戸内海でも直島は特に遠い外国から訪れる人が後をたたない。『死ぬまでに一度は行きたい島』に選ばれるほどの場所、直島。───訪れる外国人は何を思ってどう感じて帰るのか。中には何度も訪れる人もいるという。それほどまでに魅了する島。───だけど、訪れる世界中の人々の中には辛い過去があった人もいるだろうし、現代アートに感化されてその後の人生観に変 化があった人もいるでしょうし。生きているからこそ辿りつける。それは直島に限ったことではないけど、私は労力惜しまず外国人が辿り着いた直島で世界を感じて自分自身を見つめ直したいの」  ()ねたと思ったが窓の外を数秒見て沈黙を破るかのように熱く語った。俺は珍しく真面目に熱く語る曜子の期待をわざと裏切るように茶化した。 「そんなもんかねぇ。けど女子高生と一泊二日の濃密度な旅行で聖者でいられる気がしないな」 「でた、変態ウタル丸。私が言おうとしたのに薄情したわね」  いつも変態呼ばわりされているが実際に旅行して同じ部屋で泊まってなにもないってのがおかしいよな。けどそんな関係じゃないのに手を出すのは卑怯か?この状況で手を出さない方が女性に失礼なのか?成人女性なら相手の気持ちを読み取れってことだが女子高生相手だと責任取らなきゃニュースになるな。
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