20人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日。登校すると、駐輪場でばったり夏目に出くわした。
「おっ」
「げっ」
意図的に眉間に皺を作るが、夏目が俺の表情にいちいち配慮するはずもなく、自転車を引いてずかずかと近寄り、俺の隣に停めて施錠し、引き抜いた鍵のリングを人差し指に引っ掛けてくるくる回すと、思い付いたような表情を浮かべて胸ポケットに仕舞い、それを視線で追ってしまった俺にニヤリと意味深な微笑みを向けた。
この些細なやりとりだけでも負けたような気がしてしまうのだからやってられない。
「おはよっ、会長さん」
「おはよう、夏目。お前は毎日楽しそうだな」
「会長さんは楽しくないの?」
「ふん、やりがいはあるな。この学園は結構重要なことも生徒会に丸投げしがちだから、なかなか多忙な日々を過ごさせてもらってるよ。あと、いちいち俺を挑発するような問題を起こすどっかの誰かさんのおかげでな」
喋りながら、自転車の籠に入ったままのスクールバッグから畳まれたベージュのトートバッグを取り出し、夏目へ差し出す。
「おっ、さーんきゅっ」
受け取り、夏目は首を傾げる。
「もしかして、洗濯してくれた?」
「ああ、花火のゴミを入れたら火薬の臭いがついてしまったからな。ついでだ、ついで」
最初のコメントを投稿しよう!