序章 500連発

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  「ふむぅ……柔軟剤のいいにおい」  受け取ったトートバッグを嗅ぎ、にっこり微笑む夏目。成る程この愛嬌が、学園のアイドルと呼ばれる所以というわけか。思わず見とれそうになった眼球を能動的に動かし、視線を夏目から引き剥がした。 「昨日洗濯したってことは、わざわざ乾燥機もかけてくれたんだね。アイロンもかけあるし、気が利いてるねぇ。流石、歴代最秀と呼ばれる特待生にして文武両道の完璧生徒会長( )小西(こにし)幸人(ゆきと)くん!ありがとっ」  視界を地面だけで埋めてしまった俺に、夏目は何故か肩パンを食らわし、トートバッグをリュックサックに詰めて背負い直し、校舎の昇降口へ歩き始め、立ち止まって振り返り、視線で俺を促した。  まぁ、知らない仲でもない。ここまできて別々に歩くのも不自然か。 「文武両道は言い過ぎだ。特にスポーツは何もやってない」 「でも、定期テストも体力テストも常に1位だって話は有名だよ?それはもう、文武両道でいんじゃない?」 「まぁ、別にいいけど。キャッチコピーは端的で分かり易いに限るしな」  日々の勉強も体力作りも、こうして周りからの評価を上げるため、己の価値を上げるために行っているのだから。夏目の口から俺への誉め言葉が出るのは狙い通りの状況だ。俺の計画は上手くいっている。
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