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「さぞおモテになるんだろうなぁ、小西会長は」
「さぁな。少なくともお前みたいに下駄箱にラブレターが入ってたことは一度もない」
昇降口に入り、手前にある俺の下駄箱にはすぐに手が伸びた。言いながら、今時古風な扉付きの下駄箱を開ける。すると、一通の便箋が俺の靴の上から滑り落ちた。
「なん……だと」
「あらまぁ」
ありがちなコントの前振りが如く。夏目にバッチリと目撃された白い便箋を拾い上げ、俺は今世紀一番の渋面を浮かべてみせた。
「記念すべき一通目だねっ」
夏目のニヤニヤした目には触れないよう、急いで便箋を開けた。ラブレターでないことはなんとなく解っていた。あまりにも質素で、便箋の中に入っているのは手紙ではなくカードのような紙切れ。
「ねっねっ、何て書いてあった?誰からだった?」
「なぁ、夏目。これ、お前からじゃないよな?」
「むふふ、残念でした。私が告白するなら、直接伝えるもの。“I love you.”ってね」
両手を広げ、やたら良い発音で言う夏目。未だラブレターだと思っているようだし、俺と一緒にこの手紙を見つけた夏目が犯人だとは考えにくい。
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* 佐藤幸人 *
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* お前の秘密を知っている *
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* mission1 夏目涼に勝て *
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波乱の予感に、俺の背筋は凍り、全身に鳥肌が立ち、膝は震えていた。
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