序章 500連発

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  「ぐっ、汚ねぇぞ夏目!」 「え、何が?私は胸ポケットには何も入ってないって言ってるだけだよ?会長さんはそれが納得できない。なら、手を入れて確かめるしか手はないよね。会長さんにやましい気持ちがないなら、できるはずだよね」  ジリジリと間合いを詰める夏目。退く俺。クソ、こんなことで。こんなことで俺が屈してなるものか。まだ手はある。 「ふんっ、それなら田中か後藤を呼べば済む話だ」  授業中以外の使用が校則でも認められている携帯電話を取り出し、アドレス帳を開く。  しかし、俺がスマートフォンの画面に目を向けたその隙を、夏目が見逃すはずもなかった。 「スキありっ」 「しまった!」  慌てて視線を戻すと、そこに立っている夏目は手を天へ掲げていた。その指先は指し示す。空から舞い落ちる鍵の存在を。 「あーっ、空から鍵が落ちてきたよー」  とんでもない大ボラだ。どう考えても今夏目がポケットから取り出し放り投げただけだ。スキありとか言ってるし。だが理屈じゃない。この手は夏目にとって最善手であり、俺を確実に詰ませるものだ。 「このままだと下に落ちちゃうね」  夏目の言う通り、鍵は鋭い放物線を描いて屋上のフェンスをギリギリ乗り越え、下へと落ちる軌道だった。
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