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夏目は胸ポケットの鍵を指摘された瞬間から、俺がポケットを探れと言われて焦ること、女子生徒会役員を呼ぶべく携帯電話に目を向けること、学校の備品を無くすことを恐れキャッチしに走ることを読み切り、見事手の平の上で俺を転がして見せたのだ。
今回も、俺の完全敗北である。
「はー、負けた負けた」
夏目が走り去った後、打ち上げ終わった花火をかき集め、ご丁寧に用意してあったバケツの水に浸し、ゴミをビニール袋とトートバッグに詰め込んでいると、何者かが近付いて来る足音に気が付き顔を上げた。
ワックスでクシャッと癖をつけてある毛髪とメタリックブルーの眼鏡フレームが爽やかさを強調している優男、生徒会副会長の吉川秀逸である。
その名に違わず、部活動に生徒会活動、勉学に交友関係まで、学生として重要なことを満遍なくかなり高いレベルでこなしている優秀な男である。
「今日も完封負けだったな、幸人」
加えて俺のことを下の名前で呼ぶ唯一の学友であり、俺にとって唯一親友と呼べる程に心を許せる相手であるが、まだそのような態度を取ったことはない。それについて特にこれといった理由があるわけではないが、男子の友情なんてそんなもんである。
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