願い

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「そんなことないよ。すごく動揺してるし混乱してる。でも一応この中だと年上みたいだしね。俺弟も妹もいるから出来るだけ落ち着こうと思ってさ。」 そう言ってふわりと笑う達也。その顔には嘘偽りもない…ように見える。 「大人…なんですね。」 瑞香が言う。大人が何かはわからないが、そんな感じはする。 「そうかな…。ありがとう。とりあえず少し歩かないか?何か見つかるかもしれない。」 達也が立ち上がり、あたりをぐるっと見渡す。しかし眼に映るものは白。白だけだ。 「でも何も見えないですよ。」 俺が立ちあがりながら言う。どこへ行けと? 「ここからは見えないだけなのかもしれない。さあ行こう。」 達也がそう言って、瑞香の手をとって立ち上がらせ歩き出した。俺も後に続く。 「っおっと。」 なぜか急に止まる達也。そしてそのままもう片方の手を差し出してくる。 「はい。蓮君もつなご?」 向けられた手は俺よりも全然大きくて、たくましく見える。そっと手を合わせるとふわっと笑って握ってくれた。俺も握り返す。そのまま何歩か歩いているうちに俺は気づいた。達也の手が冷たく震えていることに。 「さてと、歩いてはみたけど何もないな。」 「そう、ですね。」 達也と瑞香が歩きながら話す。歩き始めてもう2時間近く経つか?時計も携帯も、というより何も持っていないから時間感覚がよくわからない。 でもそれよりも、 「なんか全然疲れないんだけど…。俺だけ?」 達也が頬を引きつらせながら聞く。たしかに…。 「結構歩いたのに全然疲れないですね…。」 瑞香もそのようだ。 「蓮は?」 「俺も。全然疲れない。足痛くない。」 「だよなぁー。おかしいよな。だって蓮まだ12だろ?なんかスポーツとかやってた?」 「全然。むしろずっと本読んでる。」 「へー。でもそんな感じするなー。瑞香は?何かスポーツやったりしてた?」 「私は部活でバレーを…。」 「へー!バレー部かぁ!俺バスケ部だよ!」 「は、はぁ。」 なんとも言えない顔をする瑞香。確かにどう返せというのか…。 「あっ!あれ!」 どこぞの冒険家のような声を上げて、達也が立ち止まった。そして俺の手を離し遠くを指差す。
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