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「ええ。どちらかが死ぬのであればね。」
と俺たちを指差して言った。一瞬言葉の意味がわからない。死…?俺も達也も立ち尽くす中、
「輪花様!」
水香が叫んだ。
「なぜです!あなたほどの力があるのなら…!」
「水香。」
水香の叫びは輪花に一蹴された。
「いくら私とはいえ、70億人もの人を生き返らせ、星をも元通りにするには、力が足りません。いいではないですか。たかだか一人。それで世界は元通りですよ?何事にも犠牲はつきもの。さあ、どちらが犠牲となりますか?」
輪花がにこりと笑う。その顔に嘘偽りはない。
「輪花様!この二人は生かしてください!それが叶いませんなら、私は舌を噛んで死にます!」
「水香!」
水香の言葉に達也が叫ぶ。水香は泣きそうな顔で俺たちを見るが、
「いいですよ?」
と輪花はこともなさげに言う。その顔には微小すら浮かんでいる。
「別に今のあなたが死んだとしても、我々は神です。また同じ役割を持つ"水香"という神がすぐに生まれるでしょう。」
唖然とする俺たち。水香は唇を噛みしめる。本当に舌を噛み切りそうな勢いだ。
「そうか。なら安心したよ。その制度まだ変わってないんだな。」
達也の声。やけに堂々としていて、少し安心できる声。輪花がキョトンとした顔を向ける。
「俺もまだ死にたくないからさー。」
達也はそう言って一歩前へ踏み出す。手を伸ばせば輪花に届く距離。輪花がその顔を見て唖然とする。
「あ、あなた、様は…。」
「ああ。俺も神だよ。人に化けてただけのな。」
達也が輪花の肩を掴む。輪花がびくっと体を竦めるが、逃げることはできないようだ。俺は何が何だかわからずただじっと立ち尽くしているだけだった。達也が神?化ける?死ぬ?
「まさか、ヒトノカミ様…?」
水香がポツリと呟く。ヒトノカミ?
「ああそうだ。俺がヒトノカミだ。はるか昔人を作った神だ。それ以来なんか愛着が湧いちまって、ずーっと人の世にいたらこんなことが起きた。ったく上も物騒な遊びをしたもんだなぁ?」
「ヒッ…」
輪花が小さく悲鳴をあげる。
「この俺が。神々の中の最上位に位置するこの俺が作った人を勝手に無くしてくれるとはなぁ!?」
俺にはよくわからない会話。しかし達也が怒っているのはわかる。
「さーて。俺と行こうか輪花とやら。言っとくが失敗は許さねえぞ?第1お前程度の力で人間全員生き返らすなんてできねえよ。
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