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「その二人が会いたい人?」
「ああ。瑞香と達也。達也にはもう会えないかもしれないけど、瑞香は人間になってこの世界にいるはずだ。」
「へぇー。当てはあるのか?」
「あるよ。」
俺がはっきりと瑞樹を見ながら言う。瑞樹は立ち止まり、首をかしげる。
「瑞樹、お前が瑞香だな?」
…………。
「なんでわかったの?」
瑞樹、瑞香が口を開く。その顔はなぜか今にも泣きそうだ。
「理由はわからない。でもお前のその姿は、達也に似ているよ。」
瑞香の目から涙が溢れる。俺もなぜか目が熱くなる。
「ごめ、なさい…」
瑞香が謝る。それは何に対してか。神を止められなかったせいか。そのせいで達也がいなくなったせいか。俺がそれを悲しんでいるせいか。あの時と同じでわからないことだらけだ。
「あなたの心の、拠り所を、奪ってしまった…。」
瑞香が続けて言う。
ドコン!
「いってぇ!!」
何かの衝撃音と声。俺と瑞香のシリアスな空気が一瞬で壊される。
「おいこら蓮!なーに友達泣かしたんだ!」
黙々と上がる土煙から懐かしい声が聞こえる。
「友達も!ほれ!男なら泣くんじゃねーよ!」
ああ。まさか本当に…
俺たちは土煙に向かって走る。ゆっくりと人影が見える。今の俺と同じぐらいの身長。瑞香に似た顔立ち。
「達也ぁ!!」
ドフッと音がして何かにぶつかる。
「おうおう!蓮まで泣いてるじゃねえか!一体何が…ってええ!?」
達也が瑞香を見る。
「お、おま、お前、水香か…?」
その声に水香は力強く頷き達也の胸に飛び込む。いつしかその見た目は5年前の女の子のものになっている。
「なーんだそっか水香かー。じゃねえよ蓮!女は泣かしちゃいけねえだろ!つかなんで水香も男の姿なんだよ!」
そう言ってなぜか俺の頭を撫でる。きっと俺たちが泣いているのに気づいたのだろう。達也が優しく言った。
「ただいま。」
神の遊びに巻き込まれた少年と、神でありながら人を助けようとし人になった少女と、人を助け人の世にとどまることを選んだ神。
この三人の物語はまだまだ始まったばかりだ。
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