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 その言葉に石動は少しほっとし、同時に少し落胆する。 「その件ですか。ええ。構いません」 「遠慮の必要はない。繰り返すようだが、今回の件に関して治療費は全て我々の方で負担させてもらう。無論それは、皮膚の移植手術に関する費用も例外ではない。せっかくの男前が、このままでは台無しになってしまうよ」  ふ、と石動は苦笑する。最後の一言は余計なお世話だ。少なくとも、今の石動に言わせれば。 「お気遣い感謝します。しかし、それを踏まえたうえで私には手術を受ける意思はない、そう申し上げたいのです」  そして石動は、顔の右半分を覆う包帯をそっと撫でる。 「この傷は、まぁ、一種の勲章ですから」 「……そうか」  頷くと、男は廊下で待機していた部下を部屋に招き入れた。自身は挨拶のみで、聴取自体は部下に一任するのが男のいつものスタイルだ。 「では、お大事に」  言い残すと、早々に男は石動に背を向ける。  その背中を、気付くと石動は呼び止めていた。 「待ってください」 「……何だね?」  迷惑顔で振り返る男に、石動は喉元までせり上がった問いを呑み込む。男の反応に怖気づいたためではない。男の口から告げられるであろう返答が、ただ怖かったのだ。 「いえ……失礼しました」 目を伏せ、窓の外に目を戻す。相変わらず空は腹立たしいほど澄み渡っていて、石動の中にくすぶる不安を仮託する余地など見出しようもなかった。  あの一件以来、石動は一度も大河内の姿を見ていない。男とその部下たちも、大河内の消息に関しては頑ななほど何も語らなかった。  生きているのだろうか。あいつは。それとも――
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