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 お持ちいただいた、ということは、この花は誰かが?  ここの病室の花は、二日に一度ほどのペースで頻繁に交換される。飾られるのはいつも、それなりに立派なブーケなので、病院の計らいにしては豪華だと思っていた。かといって、あの無粋極まる公安の気遣いにも思えない。  ふと直感する。この花の送り主は、まさか―― 「あの、この花は、誰が」  すると看護師は、一瞬しまったという顔をすると、やがて、観念したように答えた。 「ええと……それは、ええ。大河内さんが」 「お――」  ――大河内が? ということは、やはり生きていたのか?  であれば、なぜ会いに来てくてない。一応、病院には足を運んでいるのだろう。この花束を贈るために――なのに、なぜ病室を見舞ってくれない。あの日の礼を聞きたいなどとは思わない。それを言えば、礼を言いたいのは石動の方だ。 「すみません……本当は、きつく口止めされているんですけど……」 「あいつは、まだ病院に?」 「え? さ、さぁ、それは――」  答えを待つ間も惜しむように石動はベッドを降りると、裸足のまま病室を飛び出した。  根拠はない。  ただ、あいつはきっと、まだ、この病院の中にいる。今なら間に合う。今なら。だから――
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