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 約ひと月ぶりに再会した大河内は、驚くほど何もかもが変わり果てていた。  ポロシャツとチノは、御苑での散策の時に身に着けていたものと一緒だから今更目新しさは感じない。ただ、以前は毎日のように丁寧に撫でつけられていた髪は今は無造作に下ろされ、それが石動の目にはひどく新鮮に映った。 「今日は……仕事は休みなのか」  そう口にして初めて、自分が馬鹿馬鹿しい問いを投げていることに石動は気付く。ひと月ぶりの再会、それも、花だけ持ち込んで一度も病室を見舞わなかった男に、他にも訊くべき問いは山ほどある。が、いざ現実に向き合ってみると、そんな他愛のない言葉しか口にできない。そんな自分がどうしようもなくもどかしい。  そんな石動に、大河内は肩をすくめながら何でもない顔で答える。 「辞めたんだ、仕事」 「……は?」 「というより……詳しいことはアレだが、ともかく警視庁はクビになった。無理もないよな。上官の命令に逆らって、挙句あんだけ暴れ回れば……むしろ、クビ程度で済んだことの方がラッキーだよ、はは」  確かに、不可抗力とはいえ五人も射殺すれば何かしらの責任を問われそうなものだ。が、今の大河内の口ぶりから察するに、その手の事後処理で頭を悩ませている様子はない。おそらく、今回の件は石動も与り知らない力によって内々に処理されたのだろう。 「けど、連中はそれを見越した上でお前を逃がしたんじゃ」 「かもしれん。だが証拠はない。少なくともあの人は、そんなことでボロを出す人じゃない」  あの人というのは、あの凡庸を装った初老の男に間違いないだろう。  だが、仮にあの逃走劇が本当に公安側が仕組んだ計画の一部だったとすれば、なぜ大河内はクビにされたのか。 「もういいんだ、石動」  石動の無言の疑問を読み取ったのだろう、苦笑交じりに大河内は答える。
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