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「俺にはこの仕事は向かない。そのことを、今回の件で嫌というほど思い知った。たとえもう一度、同じ選択を――国か、お前かの二択を迫られたとして、俺は迷うことなく後者を選ぶだろう」  そして大河内はふたたび頬を緩める。今度のそれは先程とは打って変わった誇らしげな笑みで、その強さ清々しさに今更のように石動は魅せられる。  本当に、この男は狡い。  こんな顔でこんなことを言われたら、もう、今までの無沙汰を責めることができなくなる。 「お……お前が納得しているなら、それでいいさ」 「お前はどうなんだ」 「俺?」 「皮膚の移植手術を断ったと聞いた。……いいのか、本当に」  今度は石動が肩をすくめる番だった。かつて石動の顔を潰そうとした男。その同じ男にこんな気遣いを受けるのは何と皮肉な巡り合わせだろう。 「いいに決まってるだろ。おかげでこの自堕落な生き方とも決別できるってもんさ。それに――」  頭の包帯に手をかけ、その結び目を解く。緩んだ包帯をガーゼもろとも引き剥がすと、その顔を大河内の眼前に晒した。十人いれば十人が醜いと答えるだろう、その顔を。  堂々と。むしろ誇るように胸を張って。
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