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「ところで、お前はいま何の仕事をしてんだ?」 「仕事?」  ふっ、と石動は苦笑する。再会した古い友人同士が交わす紋切り型の質問。だが、今の石動にはこれほど面倒な問いもない。そんな問いを、まるで天気の話題でも振るかのように投げるこの男の能天気さは、あの頃とちっとも変わっていない。 「ヒモだよ」 「……ヒモ?」  問い返す大河内の訝しげな顔に、石動は軽い羞恥心を覚え、同時に、そんな自分を嗤笑する。 「正確には、元、がつくけどな。今朝がたパトロンのヤクザに棄てられて、家も食い扶持も何もかもなくしてウイスキー片手に途方に暮れていたところへお前が現れた、ってわけ。おわかり?」
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