彼と私の恋心

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 あの人のことが頭から離れないと、明が私に話したのはいつだったろう。だからそれは恋だよと私は明に教えてあげた。  明は、秋先輩が好きなんだと、私は彼に教えてあげたのだ。去年の今頃、私には半透明な明がよく見えていたから。  よりにもよって、自分を好きな女に恋の悩みなんて打ち明けるだろうか。だから私は、溶ける恋心たちのことを彼に教えてやった。  いけない人に恋をする彼の罪悪感に付け込んで、彼と秘密を共有した。秋先輩に彼女ができても、明は彼を忘れられない。だから、半透明な明は私の視界から消えないのだ。  きっと明がブレーキをかける。軽い浮遊感が私を襲って、私は明の背中に軽く顔面を押しつけていた。 「咲、嘘ついたろ? だから、道変えろなんて言った」 「嘘じゃないよ」 「嘘。だって、俺さ、もう1年も経つのにあの人が側にいるだけで……」 「それは恋じゃくて、失恋って言うのっ」  私の言葉に彼は答えない。ひょいっと私は猫みたく自転車から降りて、彼の顔を覗き込む。今にも泣きそうな明の顔が私の眼の前にあった。 「明は、あの人に縛られてるだけ。それはもう、恋じゃない……」  そっと明の頬を両手で包み込んで、私は彼の顔を見すえる。明は驚いた様子で眼を見開いて、じっと私を見つめていた。     
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