彼と私の恋心

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 そう、自分を縛るのは恋じゃない。恋は、叶わなかった時点で恋ではなくなるのだ。  だからこれは、賭け。私の恋がなくなるか、そうでないかの賭け。  私は明に顔を近づけて、彼の唇に口づけを落としていた。顔を離すと、明の驚く表情が視界に飛び込んでくる。 「あ……あ、咲……」 「先に学校行ってるねっ!」  ワザと弾んだ声を出す。明の自転車を追い越して、私はぐんぐん細道を走りだす。待てよと、明の声が背後で聞こえる。自転車の漕ぐ音が耳朶に近づいてきて、私は後方へと顔を向けていた。  透明な私と明がこちらを見つめていた。透明な私たちは気不味い様子で向かい合い、こつんと額を重ね合わせる。彼らはお互いを見つめ合い、また気まずそうに額を重ね合わせた。  そんな2人を見て私は苦笑していた。お互いが気になるのに、どうも私たちはその先に進むのが恥ずかしいらしい。  すると、透明な私がこちらを睨んできた。彼女は透明な明に向かい合って、彼に抱きつき唇を奪う。そんな彼女を唇を奪われた明はぎゅと抱き寄せていた。  恥ずかしさにぼうっと私の体は熱くなる。私は立ちどまって自分たちの恋心を見つめていた。唇を離した2人はお互いに微笑みあい、陽炎のように空気に溶けていく。 「おいっ! 咲!!」     
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