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「あの、悠真さん。澤田くんってどこかな」
正月気分が抜けて新学期が始まった頃から、じわじわと隣の席の澤田くんの呼び出しが始まる。
「さっき、隣のクラスの子に連れてかれてたよ」
「そっかぁ。どうしよう……」
「メモ残すなら、渡しておくよ」
そう言って便せんと封筒を差し出すと、女の子は嬉しそうに受け取って、体を屈めながらこそっと書いているようだった。
それから、ていねいに封をすると、お願いしますと手渡してきた。
「はい、確かにお預かりします」
こんなやりとりを、もう二件ほど追加して、渡すべき澤田くんが席に戻ってきたのはお昼休みが終わる直前だった。
「悠真さん、なんか預かってる?」
椅子に座るなり確認してくるので、苦笑しながら三通の手紙を渡した。
「澤田くん、相変わらずモテるね」
「そのネタ、もういいから」
「ごめん、ごめん。でも、私も間接的にお世話になってるから、気になっちゃって」
「知ってる。今年もお世話するからお楽しみに」
言われなくても楽しみにしている悠真なので、期待してますと返しておいた。
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