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「そういや、澤田くん的にはバレンタインってどうなの」
「どうとは?」
「いや、だから、もらう側としてどう思ってんのかなーって」
「……悠真さん、それって嫌み?」
「え、なんで」
「俺のチョコ、断トツぶっちぎりで受け取ってるモテモテのくせに」
「うーん。まあ、否定はしないけど」
男子にして料理部ホープな澤田くんに対し、悠真は背が高くて筋肉自慢の女子バレー部の王子だった。
中学でバレーを始めてから、毎年本命ですとの告白つきで女の子からチョコをもらうポジションにいる。
「でも、澤田くんだって、義理とか友チョコとかはもらうでしょ」
「そんなもの、誰がくれるっていうんですか」
澤田くんにしては、やさぐれた返事だった。
「お世話になった女の子とかから、お礼にもらわない?」
「本命がいるのにチョコ屋に渡す女子がいるわけないだろ。それでなくても、実態以上に職人だって思われてるから、義理用の安いチョコなんていらないでしょって言われてるのに」
「でも、澤田くん、駄菓子もポッキーも板チョコも好きなのに」
「ほんとにな。まあ、この時期はチョコレート飽和状態で、渡されても困るだけだからいいけど」
「ふうん、なんかごめんね」
「何が」
「私ばっかりもらっちゃって」
「いいよ。むしろ、喜んでもらえないと作る甲斐がないし。そういう意味じゃ、俺も悠真さんも、本来のバレンタインとは無縁なタイプだよな」
「だね」
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