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* * *
その日の放課後、女バレホープの悠真は絶不調だった。
「大丈夫?」
「ごめん。でも、具合い悪いとかじゃないから」
仲間の心配に平気だと答えつつも、悠真の気分はどん底だった。
聞いた時には多少がっかりしたくらいだったのに、時間が経つにつれ自分でもびっくりするくらい憂鬱になっている。
「澤田くん、やっぱりチョコいらないのか」
悠真が女の子からもらうことに戸惑っていた中一のバレンタイン、その中に手作りで美味しいチョコがあって驚いた。
くれた子に聞いたら、実は、ある男子に頼んだのだと教えられて更に驚いた。
高校で同じクラスになって、以来仲よくしているのだけど、仲よくなりすぎて特別気になるようになってしまった。
でも、自分では単なる一番近い男子なだけだと考えていた。
「そのはずだったのになぁ……」
女子だけじゃなく男子にも王子扱いされることにすっかり慣れた悠真なのに、バレンタインから縁遠いと、他の誰でもない澤田くんに言われたことがつらかった。
そのくせ、本命をもらっている気配がないことにホッとする気持ちもある複雑な乙女心だった。
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