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君が死んだ。
君の命日はバレンタインの前日。
そう、バレンタインイブだった。
以前から体調が良かなかった君だけど、まさかこんなに早く逝ってしまうなんて思いもよらなかった。
本当なら、バレンタインに向けて君が手作りちよこれいとを作っていた幸せな日に逝ってしまうなんて。
そしてバレンタイン当日。
本当なら、僕はちよこれいとが苦手なことを隠し君の感想を求める笑顔を曇らせたくない一心で美味しいといっていたであろう日。
僕はお通夜、お葬式を終え君の居ない家に帰った。
空虚感を紛らわせようと、いつも通り料理を試みて野菜室を開けると赤いりぼんの付いた小さな箱を見つけた。
思わず手に取ってそれを開けると、そこに入っていたのはいつもと同じ甘ったるいミルクちよこれいと。
ではなく、ちよこれいとの形をしたチャームの付いたネックレスだった。
不思議に思って箱をもう一度見ると手紙が同封されていた。
ーー
拝啓、あなた
私は明日にでも天に呼ばれる気がしているので、手紙を書くことにしました。
呼ばれなかったらこの手紙は、用無しだけれど念のためね。
今だから言うけど私。
実はあなたがチョコが苦手な事知っていたの。
だけど私が甘いミルクチョコレートを作り続けたのは、あなたが私の為についてくれる優しい嘘が好きだったから。
これから先、あなたが他の人と恋をすることがあって私の事を忘れてしまってもバレンタインだけは譲れない。
バレンタインの日だけは、このネックレス見て私にとっても甘いミルクちよこれいとをお供えしなさい。
ずっと愛してる。
2.13 バレンタインイブの日に
ーーーー
天邪鬼な君らしい可愛い手紙だった。
「愛してる」は言えるのに「他の人と恋愛はしないで」と言えない君。
そんな君に僕はいつもときめかされていた。
その甘い思い出は君のくれたネックレスを見ればいつでも思い出せるし、その度に恋に落ちるのだろう。
最悪なバレンタインを最高のバレンタインにしてくれる君だから。
これは、甘いだけのちよこれいの様なただ恋ではではなくて
僕と天邪鬼な君の甘くて苦い恋のお話。
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