溶解

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そんな彼女を、僕もまた、あの手この手で誘惑している。或時は、赤々しく心地よい突起で彼女を愛撫し、或時は光り輝く銀の宝石をちらつかせた。最も有効的な手段は、時間をかけて愛情を注ぐことと、人の体温であった。白い彼女を他の色で無理矢理染めようとするのではない。孤高であろうとしつつも孤独を嫌う彼女を、優しく包み込むようにそっと抱き締め、ゆっくりと時間をかけて癒し、少しずつ緊張を解し、警戒を解いていく。そのうちに彼女は心を許し、心を開いていくのだ。 そして今彼女が瓦解し、完全に僕のものになろうとしている。あたためてきた彼女の身体を、我が手で開く時が来たのだ。この高揚感。喜びはほんの一瞬。堕落してしまったら、もうそこに魅力はない。 彼女の隙である黒点に、そっと舌を滑らせる。彼女は甘い声をあげながら、少しずつ蕩け始めた。新雪に足を踏み入れるような感覚。この一瞬、一時を大切に味わい、噛み締める。 彼女は焦れて、愛液を滴らせた。ここまで来ると、僕も我慢ができない。いよいよ、彼女を完全に溶かす時がきた。崩壊。それは永遠のようで、刹那的な現象であった。 彼女の最後の一滴まで残さず味わう。満足感と同時に、一気に喪失感が込み上げてきた。 嗚呼、堪らない。やはりアイスクリームは、バニラに限る。
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