桜雪 ~ 恋してしまった。 ~

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 受験が終わった今。比較的、自由な時間がある。友達と旅行に行ったり、教習所に通ったりとそこそこ忙しい時間を過ごしてはいるが 早坂さんがシフトに入る日はなるべく入りたくて、シフトを多めに入れている。きっと、彼に恋しているなんて誰も知らない。これからも知れることなく、終わっていくと解っている。  バレンタインに、義理と偽って、皆に手作りのチョコレート菓子を差し入れした。 「上手いじゃん。これを貰う奴は果報者だな。」 と早坂さんの言葉に地味に心に刺さる。 “じゃあ、付き合ってと言ったら気持ちに応えてくれますか?そんな無邪気に言わないで。本気にしてしまうから・・・” 「山(ヒロインのあだ名)ちゃんのお菓子が食べれなくなるのは残念だな~。」 「そうそう。沙夜ちゃん(ヒロインの名前)、本当に上手だったから残念。」 と男性陣の先輩も褒めてくれるが、だけど所詮は彼ら見てもきっと幼いんだろう。彼らもやっぱり早坂さんの彼女に憧れている。 「本当ね。沙夜ちゃんには、今度お返し持ってくるわ。」 ふんわり優しく微笑む彼女は、皆のマドンナ早坂さんの彼女、天野沙月さん。性格が悪くて、ブリッ子とだったらどんなに良かっただろう。どこまでも、春の様に穏やかで、優しい素敵なお姉さん。そして、私のことも妹の様に可愛がってくれる彼女に勝ち目なんてある訳がない。 だから、すっかり諦めていた。
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