桜雪 ~ 恋してしまった。 ~

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「どうかしたんですか?」 「電車、動いてない…」 「えっ?あっ、電話だ。すみません、失礼。」 「お兄ちゃん。うん、うん。えっ?帰れない?・・・帰るけど、遅いの?分かった。先に寝るよ。・・・・・・・大丈夫。じゃあ、また。」 兄も雪のせいで帰れず困っている。 「兄貴からか?」 「はい。お兄ちゃんも帰れないみたいです。まぁ、私はこのまま、帰ります。お腹空いたし、寒いから早くお風呂入りたいな・・・。」 早坂さんには悪いがササッと帰る気満々だった。 「・・・寒いよな。・・・・・・なぁ、一晩、泊めてくれないか?」 トンでもない発言が聞こえた気がした。 「えっ?ええー!家に?早坂さんが…」 「誰も捕まらなそうだし、何より電車がこんなんじゃ…」 と困った様子。神様は、私を試しているのかと、思う。好きな人と一つ屋根の下。 私の心臓が飛び出しそうになるくらい緊張する。 「ダメか?」 この聞き方はマジで狡いと思った。 頼まれて、一晩だけ泊まることになった。念のため、家族に連絡を入れれば、両親はあっさりOKで迷惑を掛けるなと返事が返ってきて、兄に至っては、ごちゃごちゃと煩く、危機感を持てとかよくわからないことを騒いでいた。
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