東に男、京に女

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 異性をターゲットにした犯罪は、何百年経ってもなくならないばかりか、より残虐かつ狡猾にエスカレートしていた。人々は異性から自分の身や財産、社会的地位を守るため、毎年数えきれない訴訟を起こした。国は膨大な対策を講じたが、どれも間に合わず、ついにその疲弊はピークに達する。  もう、やめようじゃないか。  当時の総統が絞り出すように放った一言は、一瞬で世界を駆け巡った。  賛否両論、国外からのすさまじいバッシングも受けながら、この国の人々は皆口々に「もうやめよう」と呟くようになった。  かくして、この国は二分される。  東を男の地、西を女の地とし、行き来は固く禁じられた。  必要なやり取りは全てコンピュータを通し、官僚達ですら、顔を合わせることはおろか、声を聞くこともなくなった。物資のやり取りも、何重にも連なるゲートを通して行い、決して男女が相まみえることはない。男が西に、女が東に一歩踏み込んだ瞬間、四方に埋め込まれたセンサーが反応、即座に心臓を撃ち抜かれる。  国外からの好奇の目に晒されながら、徹底したシステム作りは進んだ。     
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