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二つの地の真ん中には、研究センターが置かれた。その更に中心には、人が入ることの出来ない繁育所がある。徹底した管理の下、AIロボットが受精卵を生成、孵化させ、乳児になるまで育てる。生まれた子が男なら繁育所の東、女なら西へ送り出され、研究者が健康状態等を再度チェックし、個体登録をした後、親元へと届けられる。無論、遺伝子としては片親の元へである。
子を得る為には、しかるべき機関に申請を出した後、自らの卵細胞(或いは精細胞)と血液を研究センターへ提出する。研究者達はその遺伝子データ等を採取、確認した後、繁育所へ細胞を送る。そこからは全てAIの仕事だ。AIは送られてくるデータ等から、よりよい卵細胞と精細胞の組み合わせを算出し、受精させる。国の男女比の均衡が保たられるよう、子の性別はアトランダムに操作される。
何を以て「よりよい」組み合わせとするのか、いつ申請すれば自分の子を抱けるのか――男が子を申請したとしても、産まれた子が女ならば対面することはない――、そして、抱いているわが子のもう半分の遺伝子はいったい誰のものなのか。年を重ね、AIがその学習機能でより高性能になっていくうちに、人間の誕生は人間の知る所ではなくなってしまった。全ては、人が立ち入れぬこの国の真ん中で、AIが計算し、決めることである。研究センターで働く多くの研究員ですら、全く立ち入ることの出来ない領域になりつつあった。
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