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AIが飛ぶような速さで成長していくのに伴って、特殊な職に就く者を除いた人々の間では、性と生の話題はタブーとなっていった。無論、異性の存在を忘れたわけではない。研究センターを擁する巨大な建物の向こうに、異性が住んでいることは知っている。だがそれは、次第に現実味を失っていく。
性と生の話題がタブーになったことで、人目につかないように押し込められたものがある。
子が生まれる「生命研究所」の北側には、「文学研究所」が聳え立っている。
書庫に収められているのは、男女が共に座し、大らかに愛を語り合う物語の数々だ。
「もはやこの国の教育には不適切」とされた多くの芸術作品が、捨てられ、燃やされてきた。ただ、国内外で高い評価を得てきた古典、古美術などには、さすがに待ったがかかった。絵画などの美術品は手を挙げた各国の美術館に買い取らせ、文学作品は国内に書庫を作って収めることになる。
この国が語り継いできた物語を、現在の人々が触れてもいいように少しだけ手を加えて、途切れずに伝えていくこと。それをの歴史と文化の理解の助けとなし、全ての国民の自国への誇りを高めること。それが、文学研究所の表向きの使命である。
文学研究所の創設に尽力した当時の総統は、女性であった。
彼女は生命研究所の北に建てられた建物を見て、こう呟いたという。
「これが、最後の望みか」
彼女は人から生まれた人であった。
文学研究所は生命研究所についで多くの秘密を抱えている。
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