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別れ
朝、お誕生日おめでとうのキスをして前の夜に借りていたレンタカーで暗いうちに外に出る。確か、タイムリープ前の時間では大体朝の9時頃だった気がする。車を走らせ、目的地につく頃には8時になっていた。助手席の融花をみるとすやすや眠っている。が、少しだけ汗のようにキラキラと水が出てきている。まずい。
「融花、ついたよ」
「……ん~??」
融花は外を向いて、わあ!と声をあげる。そこには一面の色鮮やかなポピーが咲いていた。
車からでて融花を支え、花のそばに座る。
「今まで、ありがとう。瑠斗。タイムリープまでしてきてくれて。」
「こちらこそ、ありがとう。融花。ごめん、こんなことしかできなくて。もっと一緒にいたかった」
軽く、キスをする。それから沢山思出話をした。握り合った手の薬指には結婚指輪が煌めいていた。どんどん、融けていく俺の奥さん。腕のなかでどんどん小さくなっていく俺の彼女。
どんどん融けていくだいすきな融花。何回も何回もありがとうとキスをした。融花も俺の腕のなかで小瓶を胸にかかえ、何度も何度もありがとうを繰り返した。
「……瑠斗に出会えて……しあわせだった……楽しかった……ありがとう……」
「俺もだよ。しあわせだった。ずっと愛してる」
最期のキスをして彼女はキラキラ融けていった。
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