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悩んでも、答えが見つからなくても、愛されなくても、僕はずっと歩いてた。
とめどないとさえ思う道を、意識溶けあえる人探し。
信頼できる人に、希望を抱いて。
生き続けている。
それは勇気か無理なのか、君と出会うまで、考えることすらなかった。
「溶けあうなんて簡単さ」
スクランブル交差点。
すれ違い様、黒い日傘をさした喪服姿の少女が囁いた。見知らぬ子だった。
「……簡単?」
「そう、簡単。試す?」
僕はコクリと唾を飲み、少女を見つめたまま、ゆっくりと頷いた。
少女はそっと手を差し伸べてきた。
僕は、まるで操り糸でもあるかのように、その手と手重ね合わせていた。
引き寄せられた刹那、触れる唇。
ふわりと薔薇の匂いがした。
ひとつだと感じあった後、舌をガブリッと噛まれてた。
「……ッ、痛らひ」
「君は溶けあいたいんだろ? 相手は誰でもいいんだろ?」
「ふぇっ?」
舌に触れると、血が滲んでる。
なんだか体がジリジリと熱い。
ふと空を見上げた。
サラッと砂に変わり、風に舞いあがる。
僕は世界に溶けていた。
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