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「蜜?」  健悟は怒っている様子も咎めている様子もない。ただ純粋に興味があるのだろう。  未成年の喫煙なんて見逃せないから、疑惑を取り除きたいのだとその表情からわかる。けれど納得するまでは逃がさないという空気も強く感じた。  なるほど、健悟は確かに刑事のようだ。 「さあ……吸ってるところ見たことないし……」 「ふうん。まああいつは昔から適当だからなあ」  恭治には申し訳ないけれど、健悟が納得した様子で「仕方ないやつ」と呟くのを見て、蜜はほっと胸を撫で下ろした。 「うん。あとそういえばカラオケでも部屋が煙草臭かったかも」 「カラオケ? そっか、誕生日だもんな。……というわけで、俺からの誕生日プレゼントはあれ」  健悟が指さす先はテレビの横だった。陰になって見えていなかったけれど、朝はなかった大きな箱が置かれている。そのパッケージに蜜は目を見開いた。入手困難なゲーム機だ。やりたかったソフトの同梱パックで、限定品だったから諦めていた。 「えっ、ええっー! まじで! まじかあ……ありがとう健悟くん」 「あはは、喜びすぎだよ。対戦できるみたいだからあとでやらせて」 「やろやろ! うわー……まじで嬉しい」 「もー、お兄ちゃんはすぐ蜜を甘やかすんだから。ゲームはご飯のあとにしてよ」  母の言葉で、話は中断された。 「……そういえばあんまり聞かないけど、恭治と同じ学校なんだっけ」  ささやかな誕生祝いとして、蜜の好きなものばかりが並んだ夕飯を終えたとき、ふと健悟が思い出したように尋ねてきた。  入学してから、ほとんど世話になっていない健康そのものの蜜から、恭治の名前が出たことを珍しがっているのかもしれない。 「うん。あ、昨日健悟くんと飲んだって言ってた」 「そうだよ。あいつ日中死んでたんじゃない?」  健悟は悪戯っぽくにやっと笑う。ああなることをわかっていたのかもしれない。健悟の顔は珍しく意地悪と気安さに満ちていて、蜜は笑って頷いた。 「いつまでもいい歳した男二人で飲み歩かないで、奥さんの一人でも捕まえてほしいわね」  話が聞こえていたのか、キッチンの方から声がする。健悟はぺろっと舌を出して目配せした。  奥さんという言葉に蜜はふと思い出す。 「……あ、そういえば」 「うん?」
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