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「蜜ー、十八歳の誕生日おっめでとう!」 「うおっ」  爽やかな春の日差しに背中を押されるようにして校舎に入ると、八代蜜(やしろみつ)は途端に熱烈な歓迎を受けた。  まだ少し微睡みを抱えていた蜜は、背後からきた突然のハグに思わず持っていた靴を落として大きな音を響かせた。  高校三年に進級して早々、十八歳の誕生日、朝から好奇の視線に晒された蜜は嬉しいような、恥ずかしいような、くすぐったい気持ちを抱えて首に回った腕をぽんぽんと叩いた。 「あー……ありがとな、颯太(そうた)」  振り返ると、一七〇センチの蜜より幾分高い友人が、真夏の太陽のような爽やかな笑顔を浮かべている。 「なんだよ、誕生日なのにテンション低くねー? 風邪か?」 「ちがうって。さっき担任に呼び出し食らってさー」 「榊原(さかきばら)? 何したんだよ」 「わかんね」 「日直かなんかか?」  なんだろうと小首を傾げると、颯太が首を振った。 「でも今日の放課後はあれだぞ。お前の誕生日会だから、ちんたら日直やってると時間なくなるぜ」 「お? いいの? 悪いねえ」 「北高の女子とな」 「それ合コンじゃん……」 「いいじゃん! 今日誕生日なんだーとか言ってさ、きっかけ。そろそろ蜜も彼女ほしいっしょ」 「俺は別に……」  多分、彼は誕生会という名目で合コンがしたいのだろう。友人の気遣いはありがたいし、頑なに断ることでもないけれど、それを知ると蜜は一気に気が進まなくなった。 「別に、いつも通り颯太とカラオケ行くだけでいいって」 「そんなのスペシャル感ないだろ? それにもうメンツも決まってるしさ。ちょっと違う学校の女子と遊ぶだけだって。帝大付属の制服が使えるのも今年で最後だし」
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