解除師《げじょし》

2/16
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
 病は医術によって癒える。だが呪いは医術では癒すことは出来ない。昨今では実に多くの者が呪いによって苦しめられている。  我が師は云った──これほど呪いの満ちた時代はない。  それは何故(なにゆえ)でしょうか──幼い私は訊ねた。師は難しい顔をして、無言でかぶりを振った。  世間には人に呪いをかけることを生業とする者たちがいます。その者たちを全て排除したら、この世界に呪いで苦しむ人はいなくなるのでしょうか──私は再度訊ねた。  ルシオラよ──我が師は云った。お前の正義感は、まるで研ぎ澄ました剣のようだな。  ありがとうございます──私は頬を熱くして答えた。正しくないものがはびこる世界など、間違っている。  呪いを受けた者はみな哀れだ。私の母親も呪いによって憔悴し、無残に死んでいった。呪いを受けた者はみな不幸だ。若さや美しさを根こそぎ奪われ、いきいきとした生命力を失ってしまう。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!