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私はそんな人たちを見るのが辛くてたまらない。だから厳しい師のもとで懸命に修行に励んだのち、呪いを解く者──解除師として方々を巡って生きている。何処の町、何処の村へ行っても、私を必要とする者がいる。謝礼の金品は受け取らない。その為に私は呪いを解いてるのではない。呪いを解かれた人たちが、歓びに睛を輝かせ、本来持っていた生命力を取り戻す、その光景を見たいだけ。
人はみな真に幸福に生きるべきだ。しかし呪いは幸福を喰い殺してしまう。先日出会ったあの娘もそうだ。娘は村の入り口の前で、恨めしそうに森の方を見つめながら立っていた。ひと目で私は彼女が呪いにかけられていると判った。
「どうしたのですか、」
私は訊ねた。
「病気の父の為に、森へ薬草を採りにいきたいのです」
娘は蒼ざめた顔で答えた。唇はひび割れ、双眸には光が無い。艶を失くした髪は、老人のようだった。
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