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原因は直ぐに分かった。彼は私とは別のお店で働く女の子と出来ていた。私が問い詰めると、彼はあっさり別れようと言ってきた。うじうじと引きずるのも嫌だったが、こうも簡単に振られるのもショックだった。
彼にとっては私はどうでもいい存在だった。そんな酷い男だったと思っても、なかなか『ハイ、サヨウナラ』と簡単にはふっ切れず、私はお店も辞めた。
少し経って私は久しぶりに公園に行って、今度は別の角度からあの大きな木を描くことにした。坂本に教わったお陰か前よりもうまくなったと悔しいながらも思った。
そして、いつも通りじいちゃんが来て
「おや、久しぶりだね」
と言って私の絵を見た。でもその先はいつも通りではなかった。
「なんだか、前の絵の方が良かったねぇ。これはこれで良いけど、前の絵の方が、活き活きしていたなぁ」
私はびっくりした。おじいちゃんはいつも私の絵を褒めてくれると思っていたし、今は前よりもうまくなったと自分では思っていたからだ。私は
「ちょっと最近いろいろ疲れているからかな~」
と思い付いた言葉を適当に言ってその日は早々に家に帰った。
私は次の日、久しぶりにあの画廊に行った。恥ずかしながら私はあの魚の絵の事をちょっと忘れてしまっていた。
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