大学生佐藤かおりの場合

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そして画廊にはもうあの魚の絵は無かった。私はとてもがっかりした。忘れていたとは言え、いざあの絵が無くなったのを見ると『もう少し早く来ていれば良かったのかな』などと考えてしまった。 私は悲しくなって家に走って帰った。あの魚の絵を見れなくなってから、私はなかなか絵を描く気にもなれなかった。 そんな私を思ってか講義が終わってぼーっとしている私を友達の京子がランチにでも行こうと誘ってくれた。何か食べたいものがあるかと聞かれた私は 「特にない」 とやる気のない返事をした。すると京子は 「じゃあ、とりあえず、何か食べれて、おしゃべり出来ればいっか」 と言って、とあるレストランに案内してくれた。そこは特別気取ったわけでもなく、至って普通のレストランだった。京子は 「ここさ~特別大したことないんだけどさ、迷ったら来ちゃうんだよね~」 と言いながら、慣れた感じで 「あ、私はオムライスとホットコーヒーで」 と注文した。 私は 「じゃあ、私もオムライスで、えっと飲み物は」 と壁に書かれたドリンクメニューを見てハッとした。その横にあの魚の絵が飾ってあったのだ。 京子は突然黙ってしまった私に言った 「ちょっと、かおり、どうしたのよ。飲み物どうすんの?」 私は我に返った様に言った 「え、ああ、じゃあアイスティーで」 京子は不思議そうな顔で私を見ていた。     
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