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『大したことのない』と言っているのではない。この店は本当に大したことのないレストランなのだ。
店の名前だってただ『レストラン』と言うのだ。初めの内は、魚の絵ばかり気になっていてお水をこぼしたり、注文を間違えたりしてしまったが、お店の主人もお客さんも優しく許してくれた。
そして私は自分も絵を描いていることを主人に話し、いつか
『あの魚の絵に代わるだけの絵を私が描いて持って来たら、あの絵を譲ってくれる』
という約束をした。
それから私は大学とアルバイト以外の時間は出来るだけあの大きな木の絵を描いた。あの魚の絵に代わるのはこの木だと思ったからだ。
あのじいちゃんがまたやって来て
「そうそう、こういう絵だよ。活き活きしてるじゃない。それにお嬢ちゃんの顔も活き活きしてる、もし良かったらお嬢ちゃんを描かせてくれんかね」
と言ってきた、すると横にいたおばさんも
「まったくエロ爺さんが、でも爺さんの言う通り良い絵だね」
と褒めてくれた。私は
「私なんかで良ければ何時でも描いて下さい」
と言ってモデルみたいなポーズをとって三人で笑い合った。
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