サラリーマン横田勉の場合

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もうお分かりだろうが、特別料理がうまいかと言うとそうでもないのだが、家の近くにあるということもあってか、ついついここに寄ってしまうのだ。 だが、ここ二か月くらいはここに来る理由が一つ増えた。新しくアルバイトに来るようになった女の子がちょっと気になっているのだ。 まぁ、ここのお店同様に特別美人というわけでもないのだけれどバイトの初日に私の水をこぼしてしまうというありきたりのミスをしでかして以来どういう訳か好きになってしまったのだ。 彼女は佐藤かおりといって近所に住んでいる大学生らしい。  かく言う私もこの店に負けず劣らずの大したことのないサラリーマンで、お世辞にもイケメンとも言えないし、金持ちでもないし自分でも恥ずかしくなるくらいの一般人だ。 最近ならば草食系と言われるかもしれない。まぁ最近ではむしろそれくらいが普通だろう。 かおりちゃんにも彼氏がいないということを知っていながらデートにも誘えないでいる。  ところがある日、私にとってはラッキーなハプニングが起きた。これまで、この店以外では彼女を見たことはなかったのだが、朝の駅で彼女を偶然見かけたのだ。 なんとなしに彼女を目で追っていると、彼女が改札の前であたふたしだした。恐らく定期かカードを忘れたのだろう。     
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