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不思議なことに、素行不良な男子に心惹かれる女子が存在する。三嶽君でさえ一定数の人気を集めていることは知っている。今日だってチョコをもらっているはずなのに。私のような日陰者に、チョコを無心する必要なんて無いはずなのに。
はたと気付いた。私しかいない放課後の図書室にやって来た。四六時中一緒にいるヤンキーもどき達と一緒ではなく。一人で。明日も会えるかなんて気にして。
もっと早く気付けばよかった。私に会いに来る理由なんて、一つしかない。
机を叩いて立ち上がり、イスが倒れるのもそのままに、三嶽君の後を追った。
開けっぱなしの出入り口で、振り返った三嶽君と目が合った。私がバタバタと追ってきた音が聞こえていたらしい。とてつもなく恥ずかしい。
「ちゃんと好きになってもらえるか、分からないけど!」
寒い廊下に、私の呼気が白く流れる。私から飛び出した大きな声が反響して、三嶽君は一瞬驚いたようだ。それからイタズラっ子みたいに、ニカリとはにかむ。寒さからか真っ赤になった耳と頬が、三嶽君をより幼く見せた。
「俺の方こそ」という三嶽君の声にかぶせて、私は続けた。
「私の本に興味あるんでしょ。明日、一緒に読もうよ」
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