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彼は話終えると、穏やかな顔で眠りについた。
私は小さな身体に毛布をかけた。
小さな窓には真っ白な大地が広がる。先程までは吹雪いていたが、それももう落ち着いたようだ。
私は回想する。
人類にある病が蔓延してから久しい。
それは身体が溶けていく病。どろどろと雪だるまのように、その身体は溶けてちぎれて跡形もなくなっていく。
人類は足掻きもがいたが、特効薬やワクチンどころかその病原体の正体すらつかめなかった。
私達は造られた溶けることのない肉体でそれを見つめてきた。
人類を襲ったのはそれだけじゃあなかった。
終わらない冬。氷河期が来たのだ。
もう彼らが絶滅するまでそう時間はなかった。
でも彼らには希望があった。
一人だけ。一人だけいたのだ。空気感染すると言われている病で、症状の出なかった人間が。
彼が人類の希望。
小さい身体をさらに小さく丸めて眠る姿はまるで胎児のようだ、と誰かが言っていた。
私は胎児であったことはないけれど。
また外は吹雪いてきたようだ。
私はカーテンをひいた。
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