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第4話 一日目 その4
その喫茶店は『ビッグドリーム』といって、アラフォーのマスターとアルバイトのトモちゃんが切り盛りをしている。
俺の記憶に間違いなければ、マスターは確か俺より十ほど年上だったと思う。短髪で丸縁眼鏡に口髭という、見ようによってはかなり助平な――いや失礼――個性的な顔をしている。
身長は一八〇センチには届かないものの、細身ながら筋肉質で引き締まった立派な体型だった。学生の頃は、バスケットボール部でフォワードをしていたという。活躍の程までは知らないが、一七〇センチそこそこしかない貧弱な俺からすれば、うらやましい限りである。
お店の方は、白を基調にオレンジをアクセントとした明るい雰囲気で、四人掛けテーブル席が三つとカウンターに四席あるだけの、どこの街にもありそうな小さな喫茶店だった。『ビッグドリーム』などという大層な店名のわりには。
一番奥のテーブル席が、俺の指定席である。厨房に近いことと、そこに座れば客席全体を見渡せることから、ほとんどの常連客が自分の指定席としていた。それでも俺は、その席の占有率ナンバーワンを自認している。
丁度というか珍しくというか、空いていたので連れの女性を促して席に着くと、早速看板娘のトモちゃんが、お水を入れたグラスをトレイに載せて現れた。
トモちゃんは、二十代半ばながら長い髪をポニーテールにして、ミニスカートにエプロン姿という、実に若さあふれるお色気を振りまいている。
因みにエプロンは、ビッグドリームのイメージカラーとなっている明るいオレンジを採用していて、派手でキュートで可愛いトモちゃんにはピッタリと合っていた。
このコスチュームに合わせるには、何よりもスタイルが重要だ。オレンジという色が膨張色であることは周知の事実で、普通の体型では残念な結果になってしまう。
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