第一章 友軍を集結させ、籠城に備えよ/一.急行して救援せよ

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第一章 友軍を集結させ、籠城に備えよ/一.急行して救援せよ

 全くの遭遇戦だった。  (ちょう)(ばん)(ねん)は馬上で槍の柄を握り直した。敵味方、共に騎兵だ。数はこちらが多い。あたりは、川と山とに挟まれた細長い平原。数百騎がぶつかり合う戦場としては申し分ない。  蹴散らしてやる!  先頭を駆ける趙萬年は乾いた唇を舐め、(キッ)と敵を睨んだ。二百騎ばかりの敵は、突然の遭遇にまだ戸惑っている。 「おい、()(ばん)!」  並走する(ちょう)(じゅん)が、趙萬年を呼んだ。 「何だ、大哥(あにき)?」 「ここは俺が引き受ける。おまえは自分の隊を率いて先行しろ!」 「わかった!」 「(ちゅう)(れつ)、おまえも行け!」  趙淳は実弟の(ちょう)(こう)に命じた。仲洌とは、趙滉の(あざな)だ。趙?Bは兄にうなずいた。  敵との距離が詰まる。趙萬年は、やっと身構え出した敵陣の中で特に層の薄い一点を槍で指した。趙滉が同じ一点に(えん)(げつ)(とう)の切っ先を向け、()()の兵に突破の意思を示す。  趙萬年は馬を叱咤した。 「走れ!」  馬は目を血走らせて疾駆する。     
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