第一章/三.先駆けを務めよ

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 趙家軍は敵陣を引き裂きながら駆け、神馬坡の砦の南隅へと回る。魏家軍が南門から突出して金軍を退け、趙家軍を誘導した。趙萬年を先頭に、ほぼ失われないままの五百騎が砦へと飛び込む。  魏家軍の頭目、魏友諒が趙家軍を迎えた。 「よく来てくださった。本当に、何と心強いことか!」  馬から降りた趙萬年、趙(こう)、王才は抱拳して一礼し、すぐさま挨拶を切り上げて本題に入る。趙滉が話し手となった。 「趙家軍の長、我が兄たる趙淳より(こと)(づて)を預かってまいりました。魏帥(すい)、神馬坡を捨て、襄陽に御入りください」 「(ちゅう)(れつ)殿、それはまことに(はく)(れつ)将軍がおっしゃったのか?」 「まぎれもなく兄が申しました。均州、(そう)(よう)、光化は既に金賊の手に落ちました。兵力が少なすぎたのです。堅固な城壁に()ってさえ、金賊の大兵力に抗うことができなかった。襄陽は失敗できません。一兵でも多く襄陽に集めねば、我々には打つ手がないのです」 「あいわかった。ならば、この砦を破壊しよう。金賊に利用されるのは(しゃく)だ」 「作業を御急ぎください。兄は期限を切って襄陽の城門を閉ざします」 「籠城するのか? 期限とはいつだ?」     
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