第一章/四.水の要衝を確保せよ

3/6
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/471ページ
「京西北路ってことは、湖北の中でも北側一帯の面倒を特に重点的に見ろって?」 「そうだ。趙家軍の皆に知らせて、出立の準備をさせねえと。任地は襄陽だ」 「ちょっと待てよ、大哥(あにき)。襄陽には趙家軍の全員を引き連れていけって指示なのか? 一体、襄陽で何が起こるんだ?」 「戦だ。金賊が攻めてくる」 「戦? 何で?」 「去年あたりから国境付近が騒がしいって噂は届いてくるだろう? そいつがどうやら深刻化しているらしい。朝廷への宣戦布告があったんじゃねえかと思う。辞令に添えられた訓示も、いやに物々しかった」 「でも、よりによって、襄陽を任されるのがオレたちなのかよ? 襄陽が最前線になるのは火を見るよりも明らかだ。朝廷はオレたちに危険な役を丸投げして、()(めえ)らでは軍を興しもしねえんだろ?」 「朝廷の素人どもが軍事行動を起こしたところで、俺たちの足を引っ張るだけだ。せめて軍資金はせしめようと思うが、どうなるかな。この湖北だけじゃなく、(わい)(なん)()(せん)も軍備の強化が図られているらしい」 「ウザ金と国境を接した地域全部が危険地帯ってことか。全面戦争じゃねえか」     
/471ページ

最初のコメントを投稿しよう!