第一章/四.水の要衝を確保せよ

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 国境地帯は東から順に、淮南、湖北、四川と呼ばれる。中央を占める湖北は四方八方へ陸路が開けているのみならず、より重要なのは水路だ。  湖北には、漢江という大河が流れている。漢江は西北の山中に源を発し、やがて東南の長江に合する。長江は宋の領内で最大の川だ。長江を幹線とする水の道は、大小の河川と運河によって宋の全国土を結んでいる。  漢江の覇権を握り、長江へと水軍を乗り入れるなら、宋への侵略はたやすいものとなる。宋の事実上の首都である(りん)(あん)は、長江から運河でつながった(せん)(とう)(こう)沿いの港湾城市だから、水の道が敵に奪われれば非常に危うい。 「阿萬、漢江の流れを描いた地図を出してきてくれ。明日もまた役人どもと話をしなきゃならねえから、いろいろ確認しておきたい」 「すぐ持ってくるよ。襄陽のあたりは、地元のやつに作ってもらった詳しい地図もある。あのへんってさ、支流の流れ込む口や、中洲や浅瀬、渡し場があちこちにあって、すげえ複雑なんだよな」 「その複雑な水場を睨むために、襄陽とその弟分の(はん)(じょう)がそこに築かれたんだからな」     
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