第一章 友軍を集結させ、籠城に備えよ/一.急行して救援せよ

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 趙萬年は齢十八の若さだが、行軍の足の速さは(ちょう)()(ぐん)でも随一だ。同じく素早さに定評のある趙滉が麾下を率い、趙萬年の隊に遅れず付いていく。  槍を掲げ、敵陣に突っ込む。趙萬年の勢いに当てられ、敵は(ひる)む。  立ちはだかったつもりか立ちすくんでいるのか、一騎が趙萬年の進路を阻んだ。 「邪魔だッ!」  駆け付けざまに槍を繰り出す。穂先は正確に鎧甲(よろい)の継ぎ目を突き、敵兵の喉を裂いた。血が噴き上がる。  落命した敵兵は馬ごと地面にくずおれる。それを踏み付けながら、趙萬年を先頭とする趙家軍の分隊五百騎が敵陣を突破する。  馬蹄の響きの中、背後で戦闘が始まった気配がある。趙萬年は振り返らない。朗々としてよく通る趙淳の声が聞こえた。趙淳と共に残る兵は五百騎。いずれも精鋭だ。こんなところで雑兵に破れたりなどしない。  行く手に橋がある。(いかだ)を並べて鎖でつなげ、(かん)(こう)の北岸と中洲とを結ぶ橋だ。丘のように小高い中洲の頂に(しん)()()という砦があり、人の背丈に倍する高さの土塁で囲われている。  中洲には敵軍が上陸し、土塁に群がって弩で()を射掛けている。きらきらと尾を引いて飛ぶのは()(せん)だ。箭柄に搭載された火薬が爆発すれば、炎が撒き散らされる。     
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