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窓から差し込む夕日が趙淳の切れ長で大きな目を赤く輝かせていた。きりりと太い眉は難しげにひそめられ、厳つくも端正な顔は憂いを帯びている。
大哥が心配を隠さないなんて珍しい。今回の戦はそんなにまずいのか。
趙萬年は不安になった。だからこそ笑ってみせた。
「しけた顔すんなって、大哥! オレたちは趙家軍だ。力を合わせりゃ無敵だぞ。バカ金なんか蹴散らそうぜ!」
趙淳は、そうだな、と言って笑い返した。趙淳が笑うときに目尻にできる鳥の足跡のようなしわと頬に刻まれる縦長の窪みが、趙萬年は好きだ。趙淳には笑っていてほしい。
趙家軍が襄陽に赴いたのは、それから約半年が経った頃だった。
そのときには既に、国境を越えて偵察をおこなう金軍の先遣隊の姿が毎日のように確認されていた。戦は目前に迫っていた。
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