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第一章/二.三千で五十万を迎え撃て
拾い子の趙萬年にとって、趙淳と趙滉の兄弟は育ての親であり、武人としての師でもある。趙萬年は、趙淳を大哥、趙滉を二哥、と実の哥哥のように呼んで慕っている。たまたま二人の哥哥と同じ趙姓だが、血のつながりはない。
趙萬年は、韓家鎮という小さな村に生まれ育った。幼い頃の記憶はひどく曖昧だ。親の顔も思い出せない。
今より十年前、漢江沿いの韓家鎮は茶賊の襲撃を受けた。茶賊とは、茶を商うことで巨利を得た地方豪族が武装化したものだ。
茶は、米や塩と同様に、宋に住まう全ての人民の暮らしに欠かせない。古くは薬や贅沢品だったというが、今では道端で寝起きする貧民でさえ、欠けた器に団茶のかけらを落として湯を注ぎ、ちびちびと口に含んでは空腹をごまかしている。
そんな習俗であるから、茶商はもうかる。そうすると、金持ちを狙う泥棒が現れる。それを防ぐため、茶商は用心棒を雇う。
泥棒も用心棒も、実は似たようなものだ。破落戸が腕に物を言わせて銭を得る。稼ぎの手段が紙一重に異なるだけだ。
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